所長からのごあいさつ

三好 功峰 精神医学はヒトの異常行動を対象とする学問です。ヒトは「行動」を通貨のように使用しながら社会生活を営んでいます。そして、ヒトは社会・外界から受ける刺激を「認知」することにより適切な「行動」を選択しています。このようにヒトの「認知と行動」は一体となり互いに影響しながら社会生活の通貨として機能しています。仁明会精神衛生研究所では、ヒトの異常行動の原因となる「認知」と「行動」に関わる臨床・教育・研究活動を進めたいと考えています。

 正確な診断は、すべての医療の出発点ですが、精神疾患の診断はなかなか容易ではありません。長い臨床経験と十分な知識に裏打ちされて初めて正しい診断に至ることができるものと思いますので、日々の臨床経験の中で診断力を磨いていきたいと思っています。また診断体系の工夫・改善についても貢献したいと思っています。
DSM-5やICD-10(改訂予定のICD-11も)などの診断体系そのものにも検討する余地があります。現在の診断体系は精神科診断の一致率を高めるための信頼性(reliability)は十分であるとしても、その診断体系の妥当性(validity)については十分な検討がなされているとは言えないからです。

 これからの精神医学は、臨床家・研究者と患者・家族との共同作業が求められていると思っています。思い返してみると、すでに1913年にヤスパース(K. Jaspers)は精神症状が患者にとってどのような意味を持っているかを了解することが重要であると指摘していました。これからの臨床においては、精神症状を正しく了解するために患者さんの主観的体験を正しく評価すること、患者さんの精神症状の意味を了解すること、患者さん中心のサービスを提供することが求められています。これまでの経験を踏まえたうえで、疾患を実際に体験した専門家としての患者さんや家族の皆さんとの共同作業を展開していきたいと思っています。

武田雅俊 三好功峰